バックボーンを知れば、人気のない「バイク模型」だって好きになれる
今発売中の月刊ホビージャパン4月号で、20ページほどのバイク模型小特集を行いました。
これまでヤマハさん、ホンダさん、カワサキさんも少しピックアップしてきましたが、今回はスズキさんのバイクを取り上げさせていただきました。
2、3年前から携わるようになったバイク模型。それでこんなこというのはあれなんですけど、バイク模型っていまいち人気ないんですよね(笑)。
プラモデルジャンルにおいてやっぱり人気なのはキャラクター模型。
戦車模型や飛行機模型といったスケール模型は、『ガールズ&パンツァー』の影響もあって、戦車模型が少し頭を出している感じはしますが、それ以外はまあ同じくらいの人気? その中でもバイク模型は多分一番人気がないと思います。
バイクファンは少なくないとは思わないのですが、バイクファンがバイク模型を作るとは限らないですし、そもそもバイク模型って他のジャンルに比べて特に難しいんです。
特にプラモデルを作っている人にはそれがよくわかってしまって、余計に手から離れていっている気がします。
ただ、これは持論なのですが、プラモデルが簡単・難しいって、プラモデルの作る・作らないには直結しないと思っていて、
結局プラモデルのモチーフについて興味があるかないかしかないと思うんです。
そのプラモデルが簡単だったとしても、全く知らない戦車のプラモデルは作らないですし、自分の好きなキャラクターが乗っている機体のプラモデルなら難しくてもなんとかして作ると思うんですよね。
まずはそのモチーフにどうやって興味を持ってもらえるか。特にバイク模型についてはそこに力を入れてきました。
前口上が長くなってしまったのですが、今回のスズキさんの特集は、アオシマ文化教材社さんからスズキの名車GSX1100S KATANAの完成品が昨年末になんかたくさん出たので、それにかこつけてやったような形でした(笑)。
KATANAっていうバイク知ってますか?
これについて語ると長くなるんで、ざっくりいうと『ばくおん!!』って漫画に出てくる、鈴乃木凛っていう金髪ツインテールの巨乳の女の子が乗ってるバイクで、今回はその1100cc版をピックアップしています。
そもそも1100ccが本当のKATANAと呼ばれていて、『ばくおん!!』ではそのことですごい弄られています(ちなみに凛が乗っているKATANAは400cc)。
KATANAを語る上で欠かせないKATANA専門店「ユニコーンジャパン」さんにも取材させていただき、オーナーの池田さんのインタビューも掲載しています(模型誌なのに)。
とにかくスズキ愛というか、KATANA愛に溢れていた池田さん。
もういろんなことを話していただいて、詳しい内容はもちろん本誌を確認してもらいたいのですが、そもそもこのKATANAってバイクは、約20年前にはすでに生産が終了しているバイクなわけです。
そんなKATANAシリーズのみで長年運営し続けているというのは、KATANAというバイクが特別なものであるのもそうなのですが、愛がないとできないことですよね。
『ばくおん!!』ではよくスズキのバイクを好きな人を「スズ菌」と揶揄することがあるのですが、池田さんを前にしたらそんな言葉、安っぽすぎて言えないです…。
おかげで、ユニコーンジャパンのお客さんは国内に留まらず世界中にいらっしゃるそうです。
今年の春〜夏にかけていよいよ新型のKATANAも発売されますし、スズキを世界にその名を轟かせるきっかけになった名車KATANAについて、本誌を参考にちょっと注目してみてはいかがでしょう?
もちろん完成品だけでなくプラモデルもあります。
個人的にはタミヤの1/6がオススメです。作るのはちょっと大変ですけど、めちゃめちゃかっこいいKATANAが完成します!!
そしてスズキを取り上げるのに忘れてはいけないのが、このメーカー。
ライダーなら知らない人はいないメーカー「ヨシムラ」です。
今回のスズキ特集に合わせて取材しました。多分模型雑誌でヨシムラさんに取材したのって初めてなのでは?
別の企画で模型作例を進めていた「隼X-1」に関連して、その取材を行いました。
隼X-1に関して、そしてヨシムラを知らない人に向けてヨシムラとは一体何をやっているメーカーなのか、というのも語ってもらいました。ヨシムラさんに今更そんなことをお聞きするのも非常に恐縮だったのですが…(笑)。
なんでスズキでヨシムラなのかと、知っている人には当然の話なんですが、ヨシムラさんは主にスズキさんのバイクをチューニングしてレースに出場しているんですね。
かつてホンダのレースマシンを手がけていたヨシムラ。
ですが、その技術力を恐れたホンダがヨシムラへの部品供給を止め、ホンダは自社でレースチームを作ることにしました。
その後ホンダは「RCB」というレースマシンで世界中のレースを勝ちまくり「無敵艦隊」と呼ばれ、日本で「鈴鹿8耐」という耐久レースが初開催されることになり凱旋帰国することに。
それを聞いたヨシムラはスズキからの協力の基に鈴鹿8耐に参加。
そして、世界で敵なしだったホンダのRCBの速さをアピールする大会になると思っていたのに、ヨシムラがそのRCBをぶっちぎって大会第1回の優勝チームとなったことはあまりにも有名な話。
しかも、レース中にフロントの足回りの部品が壊れたのに、現場で部品を作って修理して勝ってるんですよね…すごい。
そんなヨシムラさんがXフォーミュラクラスのマシンとして作ったのが隼X-1。
スズキの市販車最速マシンの隼がベースになっています。
隼X-1の開発に携わった開発の方にこのマシンについていろいろとお聞きしたインタビューを掲載。
また模型作例も見てもらったのですが「もうそのまんま、当時のことを思い出します」と感動してもらえて、モデラーさんに早めに作ってもらってよかったなぁって思いました。
タミヤさんのキットを製作してもらったのですが、キット通りに作ってもこうはならないのでご注意を。
ちなみにヨシムラの開発者さんが作例を見て一番盛り上がったのが、ハンドルのグリップ部分のワイヤリングが再現されていたところで、ヨシムラが手がけたマシンは必ずグリップの部分をワイヤーでグルグル巻いたワイヤリングがされているそう。
これはレース中にグリップが抜けたりしないようにするケアで、創業者の故ポップ
吉村さんが零戦の整備士であったから? という話でした。
もうヨシムラファンはバイクでも自転車でもグリップ部分にワイヤリングしないとですね!
それ以外の詳しい内容は本誌にて。
また模型作例は隼X-1以外にもRG250Γも掲載しています。こっちもすごいですよ。
こうしてバイク模型の特集記事を行う際には、今回に限らず必ず実車にまつわる方のインタビューを行ってきたんですが、それはやっぱりバイクジャンルの面白さは、そのマシンに携わった人の熱量の高さにあると思っているからなんです。
人が生身のまま乗り、時には100kmで走行したりするものなので、その作りに妥協はないですし、こだわりや思い入れもやっぱり凄まじい。
バイクは危険なもの? 賢くない人間が乗るもの?
インタビューを読んでいただければ、それは短絡的な考えで、バイクに対する価値観がキット変わるはず。
そしてバイク模型にも少し興味が湧いてくれるんじゃないかなぁと思っています。