今だから話せる、後悔しない“オススメニッパー”【2022年度版】
模型製作には欠かせないニッパー。もはや模型ジャンルならではの工具といっても過言ではないと思います。本来のニッパーとは形の違う、模型に合わせたものに変化しましたし、それこそ、ここ数年の間に出てきた片刃タイプは模型製作を突き詰めて生まれたまさに模型のための工具といえます。
忖度無しで選ぶなら、切れ味重視の片刃タイプ! その理由は“切る回数”
結局どちらがいいのかなんていう話は、各模型専門誌では大きく謳えません。やっぱり、メーカーとの付き合いもありますし、それぞれメリットとデメリットを併せ持ちますから、自分に合ったものをつかいましょう! みたいな着地点にどうしてもなっちゃいます。
元・模型誌編集者で、工具材料のメイン担当をしていた身ですから、そのあたりは重々承知しております。
で、今そうではない立場となったので言ってしまうと、やっぱり「片刃タイプ」の方が断然オススメなんです。
毎度こういう特集をするにあたって、“模型を組み立てるのに一体何回ニッパーで切るのか”という話題がモデラーさんとの間で必ず挙がるんです。
例えば、5箇所くらいのゲートで繋がってるパーツがあったとして、それを切り出すのに一度切りであったとしても5回もニッパーをグッグッと握るわけです。で、よく模型誌が初心者向けとして推奨する、少し残してあとでカットする“2度切り”なんてやった日には倍の10回。それがアンダーゲートだと更に5回の計15回。
たった一つのパーツで15回。これがマスターグレードやHMMシリーズみたいに数百パーツあるキットとなると、およそ3000〜6000回ニッパーを握ることになるというわけです。
気づかないうちに僕たちはすごい数の負荷をニッパーにかけているので、生まれてこの方ニッパーを買い替えたことがないという人は、一度ニッパーを新調することをオススメします。
それでなんで片刃をオススメしたいのかというと、やっぱりニッパーの切れ味が良いほうがカットしたときの負荷が少ないから。大型モデルを組むとその差を大きく感じることができるはずです。
切れ味と耐久性のバランスが良い片刃ニッパー「匠TOOLS 極薄刃ニッパー」が圧倒的にオススメ!
片刃タイプは切れ味はいいけど脆いというイメージ。しかも高いから、なかなか導入できていない人も多いと思います。たしかにそのとおりで、片刃タイプの雄であるゴッドハンド製「アルティメットニッパー5.0」はゲートカット推奨なので、大事に使い分けているプロモデラーも少なくないです。
ウェーブ製の片刃も急に刃が欠けたり折れたりしましたね。今のタイプはちょっとわからないですけど、少なくとも初期は僕と元職場の同僚も同じ症状がおきてました。片刃にしてはコスパが良くてオススメではあります。
その点、匠TOOLS 極薄刃ニッパーは、丈夫なんです。見た目も両刃タイプっぽいですよね。一時期両刃と勘違いしている情報がウェブで散見されました。
切れ味はもちろん抜群です。アルティメットニッパー5.0と比べるとさすがに若干劣りますけど、片刃の恩恵を充分感じられるものです。
推奨はされていないですけど、太いランナーでも全然いけちゃいます。それくらい懐が深いニッパーなので、プロモデラーでも愛用している人は多いです。
いちいち持ち替えるのも大変ですしね。持ち替えるときに落として刃先を折る、なんてリスクも無きにしもあらずですから。
国内外から新しいタイプの片刃ニッパーが少しずつリリースされていたりしますけど(amazonをみると各社片刃ニッパーの模倣品がめちゃくちゃ多い)、今でも「匠TOOLS 極薄刃ニッパー」がもっとも総合力のあるアイテムだと思います。価格も3000円程度で、片刃ニッパーにしては比較的安いほう。
定番のタミヤの薄刃ニッパーも同じくらいしますから、試しに購入してみるのをオススメします!
※スリーピークスさんのOEMなので、同社の同じようなスペックのニッパーもオススメ
はじめてのスケール模型に良質な参考書『プラモと学ぶヒストリー「真珠湾攻撃編」』
模型を趣味にすると必ず一度は気になる「スケールモデル」。
売れ筋はやっぱり『ガンプラ』をはじめとするキャラクターモデルにはなって、模型ジャンルへの足がかりもここからという人がかなり多いはず。
でも、スケール模型のほうが商品点数的には圧倒的に多いので、模型店などでの売り場面積も広く、気にならないはずがないと思います。
ただ、いざ作ってみたい! と思っても何を作っていいかがわからないのもスケールモデル。初心者にとってはどれもティーガーIだし、零戦だし、戦艦大和だしで見分けも付かないですしね。
なにか新しいジャンルに踏み込むにも何かしらの“フック”が欲しい…!
そんなお悩みに応えた本がホビージャパンから刊行されました。
ホビージャパンの別冊に旅と模型をテーマにした「ホビージャパンnext」という本のスピンオフとして、事象や歴史に基づいた模型特集を行っています。
今回のテーマは1941年12月8日に起こった「真珠湾攻撃」。なにげに昨年80周年だったことをみなさんご存知でしたか?
太平洋戦争開戦のきっかけとなった出来事ということで、割と日本人にも馴染みのある出来事を、漫画、レポート記事、そして模型でお届けしています。
模型誌の別冊でこれだけ懇切丁寧にモチーフについて解説してくれているものってあんまりないんですよね。
実写を交えた添え物程度の読み物であったり、なんならそういった類はなんにもなくて模型作例がズラズラ並んだグラビア調のものが多い中、これだけ懇切丁寧に漫画やイラストまで使って行っているのはかなり貴重だと思いますよ。
メインとなる模型部分は、キット製作に置ける工具・マテリアルにまで言及しているので、始めてスケール模型を作るための参考書として重宝することは間違いないです。
真珠湾攻撃ということで、扱っているジャンルは艦船模型と飛行機模型。
赤城や蒼龍を始めとする主力空母や、ご存知“零戦”などのキャッチーな機体が勢揃いしているのも非常にとっつきやすいのではないでしょうか。
ちなみに、判型(本のサイズ)は別冊「ホビージャパンnext」と同じなので、持っている人は本棚に並べて違和感ないですし、これを気に本家「next」の方も購入するのをオススメします!
【プラモデル製作】人気の「BMCタガネ」とは? 代用品とスジ彫り作業がもたらす効果【初心者向け】
さまざまな要因で模型需要が高まる中、模型用の工具やマテリアルの需要も高まっているようで、一時期は一部塗料や溶剤が入手困難になったりして、困ったりもしましたよね。
最近は、塗装にまつわるマテリアル関係は安定しているみたいですけど、工作用工具で人気のあるものは、なかなか手に入らないみたいです。
特にBMCタガネ。
もともとは知る人ぞ知る工具で、それこそ昔はメーカー直販しかなかったんですけど、認知度の高まりとともに量販店などにも置かれるようになり、模型需要とともに生産が全く追いつかなくなって今に至るみたいです。
久しぶりにこのブログを書く前にメーカーのサイトをチェックしてみましたが、全部生産中でした(2022年3月28日時点)。
直販時代でも人気の幅は買えなかったりしていたことを知っていると、需要が高まった今、全然買えないのは致し方ないのかな…。
大量生産できるものでもないので、欲しくても、メーカーさんに執拗に問い合わせをしたりするのは止めましょう。スジボリ堂さんは北海道の小さなメーカーさんなので…。
そもそもなぜBMCタガネが人気なのか。
それまでスジ彫りは、ニードルや目立てヤスリやデザインナイフ、彫刻刀などで主に行われていたんです。それらの工具で行われるスジ彫りは、Vの字に彫られていくので、端と真ん中では深さが変わっちゃうんですね。
彫ったときは分かんなくても、スミ入れすると濃淡が付いて結構わかったりします。製作者だけかもしれませんが…。
あと、端が盛り上がってしまうのでその処理をしないと行けないのと、端にシャープ感が出ないので、エッジの効いたディテールを形成しづらいという側面も持っていました。
対してBMCタガネはコの字型に彫られるので、深さが一定。端が盛り上がることがなく、ディテール自体がシャープに彫られるので、既存のディテールを彫り直すだけでもディテールアップに繋がるんです。
非常に固いタングステン鋼で切れ味が良く、プラモデルはもちろんレジンキットとかもで充分使えます。ただ、レジンキットの硬さだと彫り込んでディテール内部の形状を矯正することは難しいです(凸凹だと凸凹に沿って彫り込まれる感じ)。
デメリットとしては、間違った使い方をするとすぐだめになること。
彫刻刀のように押し切りすると、端が欠けます。タングステン鋼に粘りが無いんで、ねじるような動きを与えると欠けちゃうんです。
つまり、衝撃にも弱いんです。落とすと簡単に折れちゃいます。特に薄いタイプは手元から作業机の距離でも折れるので、使わないときは必ずキャップを付けましょう。
緩衝材を入れて別個で保管している人もいるくらい。大切に扱いましょう。
BMCタガネ以外の選択肢は?
BMCタガネの人気を受けて類似品が結構あったりします。性能面での差はあれど、同じような効果は得られるので、そちらをチョイスしてみるのは全然アリです!
ファンテック スジ彫りカーバイト
模型用モーターツールをメインに展開しているファンテックが手掛けるスジ彫り工具。1/144のキャラクターキットにも使いやすい0.1mm〜0.05刻みで用意されています。
タングステン系の固い金属なので切れ味は良いけど衝撃に弱いタイプです。BMCタガネと似たような感じですね。
専用のグリップに装着して使う方式なので、用途に合わせて付け替え可能。
このあたりは好みですけど、固定のほうがすぐに使えて取り回しが良かったりするので良し悪しはなんとも…。
剥き身の管理だとコロコロするので、専用ケースはぜひ買っておきましょう!
ウェーブ ホビーツールシリーズ HGマイクロチゼル
最近は模型よりも工具・マテリアルのリリースが著しいウェーブが手掛けるコの字タイプのスジ彫り工具。
なによりほかの商品にくらべて安いので、お試しとして使ってみるのは有り。ただ安い分、性能面は…? といったところ。
同じくウェーブからニードルタイプのスジ彫り工具が出ているので、それで一旦アタリを付けて、その上からこのHGマイクロチゼルでなぞるとうまくいきやすいですね。
専用グリップに装着して使いましょう。
バローベ 極細彫刻刀
スイスが誇る工具メーカー「バローベ」が手掛ける彫刻刀。ハイス鋼が使われることで、硬さと粘りを併せ持ち、押し切りなどにも耐えられる汎用性の高さが特徴です。
幅が0.2mmスタートで、スケールの小さいモデルには使いづらいのがデメリット。
でも細かい段落ちモールド作りなどに重宝するので、活躍の場は多いですよ。
https://www.yodobashi.com/product/100000001002758371/
▲ヨドバシとかで変えるみたいなのでチェック!
ほかにもamazonなどを探せばメーカー不明のそういった工具であったり、彫金ジャンルを探っても、良い工具は見つかりそうです。
スジ彫りは、既存のディテールを彫り直してシャープにみせるだけでなく、彫り方で表現を変えることができる奥深い工作だったりします。
スジ彫りの広さ、深さ、方向などで、それがディテールなのか分割なのか形状なのか変えることができて、それらを駆使して、プロモデラーの方々はあっと驚くすごい作例を作り上げたりしているんですね。
詳しいことは「ホビージャパンエクストラ2020 SUMMER」に載っていたりするので、ぜひごご覧ください。
今考えると、これだけプロモデラーの思考や、作例に盛り込まれた作業を細かく紐解いた特集って過去にもなかったと思うんですよね。多分今後も無いんじゃないかなぁ…。
まだ読んだことがない人はぜひご覧ください!