今年の鈴鹿8耐を訪れて懸念してしまうデジタルカメラの未来。
先日、鈴鹿8時間耐久ロードレースの取材に伺ってきました。
今年の鈴鹿8耐は最後のてんやわんやばかりが取り上げられていますが、正直最後のオチはそれまでの怒涛の展開がわかってこそ際立つもので、それだけ語るのは非常にナンセンス。それぐらいとてつもないレースで、多分、今後も「令和最初の鈴鹿8耐はホントすごかった…」と語り継がれることでしょう。
…と、まあ鈴鹿8耐のことを色々と語りたいところですが、今回はバイクではなくカメラについて。
僕は取材班としてマスコミが集まるメディアセンターに4日間滞在していたのですが、そこで気になることといえば、こういう最高峰のレースの取材に来ているプロカメラマンたちはどんなカメラを使っているのか、ということ。
あんまりジロジロ見るのも微妙なので、あくまでふんわり眺めたざっくりとしたラインナップをお届けしてみようかなと思います。でも多分あんまり間違っていないと思います。
1.キヤノン EOS 1D X Mark 2
言わずとしれたキヤノンが誇るプロ機です。僕と一緒に取材に来たプロカメラマンのカメラもこれです。もうマスコミ全体の7割弱がキヤノンで、そのほとんどこの機種なんじゃないかと思うくらい見渡す限り1DX。
カメラシーンではミラーレス機が台頭していて、キヤノンは苦戦しているとのことのようですが、プロの現場では全然違いましたね。
じゃあ残りの3割がミラーレスかというと…。
2.ニコン D5
まあこれですよね。1DXに紛れて散見されたのはニコンが誇るプロ機D5でした。
残りのほぼ3割がこれです。大きい単焦点望遠レンズをつけている人は大体D5という具合。
現場には出張プロサービスが設けられていたのですが、来ていたのはキヤノンとニコンだけ。去年も鈴鹿8耐の取材には行っていたのですが、変わらずでした。
3.ソニー α9
やっと来ましたミラーレスシーンを引っ張るソニーが誇るハイエンドモデルα9!
と言っても、多分α9かな…? という感じでして…ソニーのカメラは遠目だと9なのか7なのかさっぱりわからないんですよ。
ちょっとゴツゴツしてたっぽいから9じゃないかなぁと。
ということで、ようやく登場したミラーレス機。ほとんどが一眼レフという話をしましたが、一眼レフで見かけたのは上記2機種くらい。
それ以外はミラーレス機ということになるんですが、まあさっきの割合の話からお察しの通り…ほとんどいませんでした。その中でもまあ見かけたのがこのα9だか7だかで、2、3台くらい?(報道陣はおよそ100人ほど)。しかも望遠がついてた感じではないんですよね。ついていて200mmまでの望遠? あとはキヤノンのレンズがついていたり、そもそも動画用として持ってきていたり。でもあんまり稼働しているようには見受けられなかったですね。
あと、日本人よりは海外の人が持ってきている感じでした。
連写やAFに優れていると言われているソニーのカメラで、レースシーンには向いているというか、そういうシーンで使える性能が売りだったような気もするんですが、少なくとも鈴鹿8耐では大して使われていないみたいでした。
4.オリンパス E-M1X
去年は私以外メディアセンターでは見かけなかったオリンパスのカメラですが、今年は一人いらっしゃいましたね(去年もどこかにいらっしゃったとは思うんですが…カタログのレースの写真がまさに鈴鹿8耐のスタートシーンだったので)。
たった一人ではあったんですが、ソニーのα9と違うところは、完全にメイン機で使われていたこと。その人はE-M1X3台持ちで、300mmF4、40-150F2.8、12-100F4をつけておられましたね。
以前のイベントで発表になっていた100-400があったらなぁって思っていただろうなぁ〜なんて想像してみたり。
話かけたかったんですが相手も仕事で来られているし、ビブス持ちの常連取材班の方だったので、そうじゃない僕としてはなかなか…。
鈴鹿8耐みたいなレースの取材では、経験値と実績によって取材班にランク付けがされて、それによって取材できる範囲も変わってくるんです。
ビブス持ちはレース取材を生業としている方がほとんど。スポット的に取材を行なうような僕らみたいな人たちには当然渡してくれることはありません。
かなり厳しいです。
5.富士フイルム X-T3
めちゃくちゃ意外だったのがこの機種。X-T3になって随分マシになったと所有しているカメラマンからは聞いていたものの、正直AFにはあまりいいイメージのない富士フイルムのカメラを使っている人がいたなんて驚きでした。
あのグリーンがアクセントの白レンズを持ってらっしゃいましたよ。ただX-T3をメインで使われていたかはちょっとわかりませんでした。
以上となります。
よくわからない人からすれば「鈴鹿8耐なんていう三重県でやっている“草レース”でこうだったからってなんなんだ」って話に聞こえるかもしれないですが、鈴鹿8耐はバイク耐久レースの世界戦の最終戦に当たるもので、ここでその優勝が決まる上に、鈴鹿8耐に優勝したチームはそれとは別にちゃんと表彰式が設けられるくらいの特別なレース。大げさかもですが、世界で注目されるワールドクラスの舞台なんですね。
また、取材環境の悪さもトップクラスで、気温が真夏の30度以上で影もないアスファルトの近くだから体感温度はそれ以上。今年は台風が直撃しましたが、そうした突然の雨の中でもきっちり連写して時速約300キロで走ってくる大量のバイクを捉えないといけません。
そういう世界最高峰かつ最悪環境の舞台を取材をするにあたって選ばれるカメラというのは、それだけの性能と何より信頼性が認められたもの、ということになります。
その中にあったミラーレス機はたったの5台。見落としていたとしても2桁は言っていないでしょう。
2020年には東京でオリンピックが催され、これからはミラーレス機の時代で、オリンピック会場にはミラーレス機が多く見られ、キヤノンやニコンだけでなく、もしかしたらソニーのミラーレス機が目立ったりするのでは? なんていうことを語っていた人もいらっしゃってましたが、今年の鈴鹿8耐を見る限り、よりシビアなオリンピックという舞台でそうなるかというと…夢物語かなぁ。
もはやカメラ市場を支えているのはプロではなくハイエンドアマチュアで、そういう人たちからはミラーレス機は大きく支持を受けているかもしれないですけど、やっぱり世界的な大舞台で使われているか否かの影響は小さくないと思います。
加えて、「デジカメinfo」にこういった記事が載っていました。
この件に関しては別の機会に書きたいなぁとは思ってますけど、まあそうだよねっていう肌感は以前からありました。
今回お話したプロの現場もまさのその一端と言えるでしょう。
本当にカメラはミラーレス機がメインになっちゃうんですかね? そしてその選択は果たしてカメラシーンの将来にいいことなんでしょうか…?
来年の鈴鹿、またオリンピックの状況が俄然気になるところです。